腰椎椎間板ヘルニアとは

腰椎椎間板とは

腰椎椎間板(ようついついかんばん)とは、身体の神経が集まっている背骨の一部組織のことで、背骨の腰部分の骨の集まりの間でクッションの役割をする組織を指して「腰椎椎間板」といいます。

身体の神経は、脊柱管(せきちゅうかん)と呼ばれる背骨の真ん中部分に束ねられるとともに脳と体をつないでおり、上述の体の感覚を脳へと伝達する役割を果たしています。

この背骨は複数の椎骨(ついこつ)と呼ばれる複数の骨のブロックでできています。腰椎椎間板とは、この背骨を構成する椎骨のうち、腰の部分に存在する5個の椎骨である腰椎(ようつい)に存在し、椎骨のクッションの役割をする軟組織のことです。

腰椎椎間板ヘルニアとは

上述で説明してきたとおり、腰椎椎間板は背骨における背骨の腰あたりの位置にある軟組織です。腰椎椎間板ヘルニアとは、腰の椎間板が飛び出すなどして周囲の神経を圧迫し痛みやしびれといった症状をもたらす疾患です。急に腰やお尻に痛みが現れて、数日後には痛みが強くなったり、足の方にまで痛み・しびれが広がったりします。

特に20~40歳代の発症が多いですが、高齢者でも「腰部脊柱管狭窄症」などに合併して起こることがあります。また、早ければ10代でも発症することがあります。(*1) 男性の発症頻度は女性の約3倍(*2)と報告されています。

とはいえ、かならずしも椎間板の状況と痛みや症状が一致するわけではなく、腰椎椎間板ヘルニアかどうかは様々な診察・検査を経て総合的に判断する必要があります。

 

椎骨と椎間板

(図)椎骨と椎間板

 

 

腰椎椎間板ヘルニアの症状

腰椎椎間板ヘルニアの初期症状では、腰やお尻に痛みやしびれがみられます。

次第に片側の下肢(脚)へ拡がり、思うように脚を動かせなくなり、つまずきやすくなったり、脚を上げることが難しくなるなど、自由に動かせない程のしびれや激しい痛みが生じることがあります。

特に、お尻~太ももの裏にかけての痛みは「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」とも呼ばれ、腰椎椎間板ヘルニアの代表的な症状のひとつです。くしゃみや咳で悪化する特徴があります。

また、腰椎椎間板ヘルニアによる神経圧迫が重篤な場合には、下肢(脚)の痛みやしびれが片側だけでなく両側で生じるようになることがあります。最悪、痛みが強いために夜も眠れなくなることもあります。

さらに、膀胱や肛門への神経障害が現れることがあり、排尿・排便障害を起こすことがあるため、その場合には緊急の受診が必要です。

※ただし、腰椎椎間板ヘルニアによる腰や足の痛み・しびれのピークは発症後約1か月で、2か月3か月と時間が経過するにつれて症状が和らぐことも少なくありません。

 

腰椎椎間板ヘルニアの症状

(画像引用)腰椎椎間板ヘルニアの症状|日本整形外科学会

腰椎椎間板ヘルニアのセルフチェック

腰椎椎間板ヘルニアの特徴的な症状をご紹介します。もし下記のような症状があれば、腰椎椎間板ヘルニアの可能性がありますので、一度、整形外科を受診されることをおすすめします。

  • ある日(ある時期)突然、腰や足に痛みが現れた
  • 安静にしていても、常に痛みやしびれがある
  • 痛み・しびれがある腰や足に体重をかけると、症状が強くなる
  • 階段を上るときなどに足が持ち上がりにくい

心当たりがある方は、腰椎椎間板ヘルニアの可能性がありますので、一度整形外科で検査を受けることをおすすめします。

特に、次のような下肢の筋力低下(麻痺)排尿・排便障害がみられる方は、速やかに専門医への受診が必要となります。

  • つま先歩きができない
  • かかと歩きができない
  • 座った状態で足の親指が上にあがらない
  • 尿意がわからなかったり尿が出にくかったりする
  • 肛門周囲が痺れたり感覚がなかったりする
  • 失禁(便や尿が漏れる、出ている感じがわからない)

 

腰椎椎間板ヘルニアの発症部位

「腰椎椎間板ヘルニア」の発症部位である腰椎(ようつい)は、背骨(脊椎(:せきつい)とも)の腰部分のことで、この腰椎は5つの椎骨(ついこつ)から構成されています。

 

脊椎と腰椎

(図)脊椎と腰椎

 

椎間板は、椎骨と椎骨の間に位置し、軟骨組織でできている「線維輪(せんいりん)」とその線維輪に囲まれ中心に位置するゼリー状の「髄核(ずいかく)」から構成されます。脊椎をつなぐとともに衝撃を和らげるクッションの役目をしています。

この椎間板の「線維輪」に亀裂が入り、亀裂から内部の「髄核」が外に飛び出すことを「ヘルニア」と呼び、腰部分の脊椎、つまり腰椎で発生したものを「腰椎椎間板ヘルニア」といいます。

特にヘルニアが起きやすい部位は、第4腰椎と第5腰椎の間(下から2番目)・第5腰椎と仙骨の間(一番下)の2か所です。なお、高齢者では成人よりも上に位置するの椎間板(第1腰椎と第2腰椎の間~第3腰椎と第4腰椎の間)でのヘルニアがみられることがあります。

※椎間板の飛び出しがあるからといって、必ずしも痛み・しびれなどの症状が現れるとは限りません。

 

椎間板の構造

(画像引用)椎間板の構造|日本整形外科学会

腰椎椎間板ヘルニアの原因

腰椎椎間板ヘルニアの直接原因は、椎間板の中にあるゼリー状の髄核が後ろに飛び出して、神経(脊髄神経・神経根)を圧迫することです。

 

腰椎椎間板ヘルニア

(図)腰椎椎間板ヘルニア

 

ヘルニアを起こす要因には様々あり、「遺伝的要因」と職業や生活などの「環境要因」が絡み合っています。発症に影響を与える要因には、次のようなものがあります。

加齢

加齢に伴って椎間板が弾力性を失うため、傷つきやすくなり、椎間板内の髄核が飛び出しやすくなると考えられています。また、加齢による椎骨同士の負荷増大・間隔狭小化に伴って間でクッションになっている椎間板が外に逸脱しやすくなるとも考えられており、加齢は重要な発症因子のひとつと言えます。

労働環境

中腰となったり重いものを持ち運んだり、長時間の立ち仕事・座り仕事など腰椎に負担のかかる姿勢での作業・仕事は、事務仕事の方に比べて約3倍発症リスク(*4)が高いとされています。

喫煙

タバコに含まれる「ニコチン」によって、椎間板周囲の毛細血管が収縮して栄養が充分に行き渡らなくなるため、椎間板が変性しやすくなります。アメリカの研究ではたばこ1日あたり10本吸うと発症リスクが約20%アップしたと報告(*4)されています。

遺伝子(遺伝)

遺伝的要因も示唆されており、近親者で発症者が集まりやすいとも言われています。(*5) 特に10代の患者さんでは遺伝要因の影響が強いと報告(*4)されています。

椎間板には血管がないため、一度傷つくと自力で修復できません。
椎間板に負担がかかる仕事や動作などは、椎間板の消耗を早め、変性を促進する原因となります。
腰椎椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴
  • 仕事や子育てなど日常的に中腰・前かがみの姿勢をすることが多い
  • 重たい荷物を持つ、腰を強くひねる動作をすることが多い
  • 姿勢が悪い(猫背)
  • 長時間座りっぱなし、立ちっぱなしの仕事をしている(運転手など)
  • 肥満である
  • ハイヒールをよく履いている

腰椎椎間板ヘルニアの検査・診断

当院ではMRI検査による正確な診断を行い、「なぜ腰椎椎間板ヘルニアが発症したのか?」という根本的な原因を突き止めて治療に繋げることに注力しています。

① 問診・視診・触診

自覚症状のほか、痛む場所、痛むタイミング(安静時やくしゃみ・咳での悪化など)について詳しく伺います。
触診では腱反射・感覚・筋力の検査など神経学的診察を行うことで、どの部分の椎間板が飛び出しているかを推測することができます。第4椎骨と第5椎骨の間、第5椎骨と仙骨の間にヘルニアがある場合には、親指を上に反らす筋肉が弱まります。

② 下肢伸展挙上試験(SLRテスト)

下肢伸展挙上試験(かししんてんきょじょうしけん)とは、痛みを誘発することで腰椎椎間板ヘルニアかどうかを確認するテストです。

患者様に仰向けに横になっていただき、膝を伸ばした状態で医師が脚を上に持ち上げ、太ももの後ろやふくらはぎ・すねの外側に痛みが現れるかどうかを確認します。腰椎椎間板ヘルニアに罹患している場合には、このテストで痛みを感じることが多く、鑑別に役立ちます。

なお、同じように痛みを誘発する検査に「大腿神経進展テスト(FNSテスト)」というテストもあります。大腿神経進展テスト(FNSテスト)は患者様にうつぶせに寝転んでいただき、医師が患者様の腰を押さえながら膝を上に持ち上げ、太ももの前側・すねの内側に痛みが現れるかをチェックします。上位椎間板(第1椎骨と第2椎骨の間、第2椎骨と第3椎骨の間、第3椎骨と第4椎骨の間)のヘルニアの場合にはこのテストで痛みがみられます。

ただし、高齢者ではいずれの検査でも陰性となることが多いと報告されています。

③ X線検査(レントゲン検査)

X線検査(レントゲン検査)では、骨の状態を確認することができます。

腰椎や骨盤のアライメント(反り腰や猫背など)や、似たような症状を起こす別疾患(腫瘍や脊柱変形など)との鑑別のために行います。

④ MRI検査

腰椎椎間板ヘルニアの確定診断が可能な検査方法です。MRI検査では、骨を映しだすレントゲン検査と違い、骨以外の軟部組織の状態も確認することができます。ただし、MRI検査で椎間板ヘルニアが確認できても、無症状であれば積極的に治療する必要はありません。

腰椎椎間板ヘルニアの検査

(画像引用)腰椎椎間板ヘルニアの検査|日本整形外科学会

 

ほかにも、必要に応じて、CT検査、椎間板造影検査、神経根造影検査、神経検査などを行うことがあります。

腰椎椎間板ヘルニアの治療法

椎間板ヘルニアの治療の基本は大きく分けて2つです。

皮膚を切開せず外科的な方法をとらない①「保存療法」と、皮膚を切開し直接患部を操作するなどする外科的な方法である②「手術」です。

ひと昔前までは、腰椎椎間板ヘルニアは手術で除去することが多かったのですが、近年の研究により、2~3か月で自然に退縮(縮小)して症状が軽くなるケースが多いことが分かってきました。

そのため、まずは「保存的治療」から始め、それでも症状が取れないときや歩行障害、排尿・排便障害がみられた場合には「手術」を選択します。腰椎椎間板ヘルニアに対する保存療法の有効性についてはいくつかの研究があり、1例をご紹介させていただきます。

52例の腰椎椎間板ヘルニア患者に保存療法を行った研究では、日常生活に何らの支障がなくなり治癒したと言ってもよい数が19例、保存療法前より良くはなったものの一部症状が残った数が15例でした。数が少ないので絶対的な数値ではありませんが、65%の腰椎椎間板ヘルニア患者が保存療法で良くなったことになります。(*3)(腰椎椎間板ヘルニアが保存療法で65%治せるという意味ではありません。あくまでもご参考とご理解いただきますよう願います。)

① 保存的治療

腰椎椎間板ヘルニアの保存療法的治療では次のような治療を行います。
局所安静

痛みが強い急性期には、まずは安静にすることが大切です。
ただし、痛みが落ち着いてきたら、積極的に動かして筋力低下・可動域制限(動かしにくくなること)を防ぐ必要があります。
<痛いときにオススメの安静姿勢>
膝と股関節を少し曲げた姿勢が、おすすめです。
ふつうに仰向けに寝ているよりも、布団を丸めて上半身の下にいれるなどして上半身を少し高くしたり、膝下にはクッションなどを置いて膝を曲げたりするとよいでしょう。

薬物療法

「痛み止め」の内服や湿布などの外用薬の活用、筋肉の緊張を和らげる「筋弛緩薬(きんしかんやく)」、痛みの悪循環を断ち切る「ブロック注射」*4などで速やかに痛みを取り除いて、早期からの運動療法に繋げます。
*4ブロック注射:痛む部位の神経付近に麻酔薬を注射して、痛みを抑える治療。
なお、当院で対応している腰椎椎間板ヘルニアに適応するブロック注射には、即効性が期待できる「腰部硬膜外ブロック」、筋膜と周辺組織の癒着も改善する「ハイドロリリース・筋膜リリース注射」があります。患者様の症状や腰椎椎間板の状況に応じて、選択します。

物理療法

物理療法とは電気や熱といった物理エネルギーを応用した治療方法のことです。痛みの緩和や血流改善、凝り固まった筋肉や関節の動きを改善させるなどの治療目的があります。
患部を温める温熱療法、骨同士の隙間が狭くなって押し出されている椎間板に隙間を作る牽引療法(骨盤の牽引)、故意に動かしづらい筋肉に電気を流してほぐす電気刺激療法、そして体の深くを温め神経などの緊張をほぐす目的の光線療法(レーザー・赤外線)などにより、運動機能の活性化や組織の緊張をほぐすことによる疼痛改善効果などを図ります。

運動療法

運動療法はストレッチや筋力トレーニングなどを行う治療でリハビリテーションとも呼ばれます。腰への負担軽減を図り、症状悪化の抑止や動作の癖を治すことに寄る再発防止効果などが見込めます。
運動療法は「痛みが落ち着いてから行うこと」がポイントです。腰椎椎間板ヘルニアに対する運動療法(リハビリテーション)は下半身を中心に姿勢や動作の改善、可動域訓練、徒手療法(マニピュレーション)、体幹・筋肉トレーニングなど総合的に行い、腰への負担を軽減させます。

装具療法

装具療法とはコルセット(サポーター)・腰椎バンドなどを身につけることで腰の負担軽減を図り、腰椎を安定化させることを目的とする治療です。
腰椎血看板ヘルニアにおいては主に痛みの強い急性期に使用します。痛みが落ち着いてきたら、装着しながら上述の運動療法(リハビリテーション)を始めます。

ただし、装具は体の一部の動きを制限するもので、それによる痛みを伴う動作を避けることができる治療ですが、動きを制限された筋肉は当然衰えますので、長期間に渡る使用は筋肉の低下を招き、ヘルニアの再発に繋がる恐れがあるため、連続使用は2~3か月程度に抑えます。

医療用コルセット

(画像)医療用コルセット
当院での腰椎椎間板ヘルニア保存療法

腰椎椎間板ヘルニアの治療では、「痛みを抑えること」と「腰への負担を軽くすること」の両方を並行して行うことが大切です。

当院では「積極的保存治療」として、薬物療法やコルセットなどの装具療法のほか、国家資格である理学療法士の資格を持った専門的指導の元、物理療法・マッサージ・運動療法などの理学療法(リハビリテーション)に力を入れています。医師の診断のもと、理学療法士が腰椎椎間板ヘルニアによる痛みの緩和や、良くするだけでなく再発防止のための腰に負担をかけない姿勢・動作など身体作りをサポートします。

② 手術(MED法・PELD法・MD法)

腰椎椎間板ヘルニアによる神経圧迫ダメージが大きく、下肢(脚・足)の麻痺、重篤な歩行障害、排尿障害などがある場合には、手術が必要となることがあります。

またそれ以外にも、上述してきた保存療法を行っても改善せず、痛みがひどくなり歩けないなど日常生活に支障を来しているときには、手術を検討します。当院では、患者様の年齢や体力・どこまでの回復を希望するかなどを伺い、よくご相談させていただいた上で選択しています。

ただし、下垂足(かすいそく:神経障害で足・つま先が上がらないこと)や排尿・排便障害がみられる場合、後遺症を回避するために発症後48時間以内の緊急手術が望ましいとされています。(*4)

内視鏡下ヘルニア摘出術(MED法)

1998年頃より日本で行われていた低侵襲のヘルニア摘出術です。MED法は腰の後ろ側の約1.6cmの皮膚切開を行い、そこから内視鏡など器具を挿入します。切開による傷口は比較的小さく済みますが、ヘルニアにたどり着くまでに筋肉や骨などを傷つけてしまいます。手術は全身麻酔下で行われ、約1時間程度で終了します。手術翌日から歩行開始となります。入院期間の目安は約5日~1週間です。

経皮的内視鏡椎間板摘出術(PELD法)

先述の内視鏡下ヘルニア摘出術(MED法)より低侵襲のヘルニア摘出手術です。腰椎椎間板ヘルニアのあらゆるタイプに適応でき、2012年より保険適用となりました。
経皮的内視鏡椎間板摘出術(PELD法)では、内視鏡下ヘルニア摘出術(MED法)で使用される内視鏡よりも細い直径約6~7mmの極細の内視鏡を使用します。椎間孔(ついかんこう)*と呼ばれる元から存在する空間を利用して直接ヘルニアにアプローチし、手術を行います。
*椎間孔:椎骨と椎骨の間にある穴(すき間)で、脊髄神経が通っている
また、局所麻酔で行うことができ、手術は20~40分程度で終了します。傷口が小さいので抜糸も不要です。この経皮的内視鏡椎間板摘出術(PELD法)は通常、日帰りまたは一泊入院で治療でき、さらに手術当日から歩行を開始できるため、早期の社会復帰が可能とされています

顕微鏡下椎間板摘出手術(MD法)

顕微鏡下で行うヘルニア摘出手術です。内視鏡下ヘルニア摘出術(MED法)と同じく全身麻酔で行います。
この顕微鏡下椎間板摘出手術(MD法)での皮膚切開は約3~5cmと、内視鏡下ヘルニア摘出術(MED法)や経皮的内視鏡椎間板摘出術(PELD法)よりも切開する範囲が大きくなりますが、神経・血管を拡大して見ながら行えるため安全性が高く、腰椎椎間板ヘルニアによる神経の圧迫が解消取れたかどうかの確認も容易に行えます。手術時間は約2時間となり、約1~2週間の入院が必要です。

そのほか、腰椎すべり症など椎間板の変性が強く腰椎が不安定なときや、重症の神経障害による痛みを伴っているときには「固定手術」を併用して行うことがあります。

腰椎椎間板ヘルニアの予防

日常生活では、次のような点を意識すると良いでしょう。

日頃から「正しい姿勢」を意識

正しい立位や座位の姿勢を理解して、日頃から保つよう心がけましょう。猫背などは今回の主題である腰椎に負担がかかります。
また、長時間同じ姿勢でいることや、腰に負担のかかる姿勢は避けるようにしましょう。特にうつぶせで寝ることは腰に負担がかかりますのでやめたほうがよいでしょう。ベッド・布団はやや固めのものを選ばれることをおすすめします。

中腰での作業を避ける

自分より高い位置にあるものを取るときは、台を使うなどして腰を反らさないようにし、自分より低いときは膝を曲げるなどして腰を曲げたり反らしたりしなくて済むように高さを調節し、中腰の姿勢を取らないように注意しましょう。

筋力トレーニング

無理のない範囲で背筋・腹筋を鍛えましょう。お腹や腰周りの筋肉が天然のコルセットとなります。背筋・腹筋のストレッチ(筋肉を伸ばすこと)を行うと、痛みの軽減につながります。

適正体重を保つ

肥満も腰に負担がかかり、腰椎椎間板ヘルニアの発症原因となったり、発症している場合は症状を助長する要因となりえます。日常に運動を取り入れ、もし肥満であるならば減量し適正体重を目指すようにしましょう。

湯船に浸かる

治療の項で温熱療法に触れたように、患部を温めて血行を促進することは腰椎椎間板ヘルニアに効果的であり、湯船に浸かることも温熱療法のひとつと言えますので、シャワーだけで済ませずに浴槽で体を休めることも予防に繋がります。

簡単腰痛予防ストレッチ

腰椎椎間板ヘルニアを予防するには、腰だけではなく股関節や胸椎など腰周りの柔軟性や筋力も必要となります。

ストレッチはお風呂上りや運動後など、全身の血流が良くなっている際に行うとより効果的です。ここでは腰痛に有効なストレッチをいくつかご紹介いたします。

ただし、ヘルニアの発症直後(急性期)など、痛みが強いときのストレッチはかえって痛みが悪化するなど逆効果となりえますので、発症の直後は安静には行わなず、ひとまず安静にするようにしてください。また、ストレッチ中に痛み・しびれなど症状が現れたり悪化したりするときもすぐに中止し、速やかに医師の診察を受けましょう。

腰痛予防ストレッチ①腹筋ストレッチ

  1. 仰向けに寝て、膝を立てる(足の裏はしっかり床につける)
  2. お尻の穴を天井に向けるようにする
  3. 頭を上げ、上半身を丸めるようにおへそを見る

腰痛予防ストレッチ②腰上げストレッチ

  1. 仰向けに寝て、両膝を90度に曲げてお尻の下に両手を置く
  2. かかとをお尻の方に引き寄せるお尻と太ももの裏の筋肉に力を入れ、お尻をゆっくり床から浮かせる(5秒静止)
  3. ゆっくりお尻を床につける

このストレッチは目安として1~3までを10回繰り返すようにしましょう。

腰上げストレッチ

(図)腰上げストレッチ

腰痛予防ストレッチ③下半身ひねり

  1. 仰向けに寝て、両膝を立てる
  2. 両肩が床から離れないように気を付けて、両膝を横に倒す(10秒静止)

目安として左右10回ずつ行うようにしましょう。

 

ストレッチの目安回数を記載していますが、無理してその回数に合わせる必要はありません。むしろ、回数は少なくてもよいので、できる範囲で習慣化し、ずっと取り組んでいくことのほうが大切です。

腰椎椎間板ヘルニアに対する当院の取り組み

当院における腰椎椎間板ヘルニアの治療は、従来の保存的治療による痛みの改善に加え、再発や新たな部位の痛みの発生を予測して予防する治療「積極的保存治療」を行っています。

積極的なリハビリテーションと姿勢・動作矯正などによって、腰(椎間板)に負担をかけない身体作りをサポートしています。

腰や足に痛み・しびれなど違和感が現れたら、お気軽にご相談ください。

 

*1…石井 秀典, 今井 健, 小西 明, 角南 義文「腰椎椎間板ヘルニアのMRIからみた保存療法の適応」日本腰痛学会雑誌 2003年 9巻 1号 p.74-79

*2…患者さんのための腰椎椎間板ヘルニアガイドブック

*3…宇田 川博, 林 栄一, 井上 喜博, 村上 圭介「腰部椎間板ヘルニアの保存的療法」医療 1965年 19巻 12号 p.1081-1084

*4…腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第2版)

*5...腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第3版)

…花北 順哉「腰椎椎間板ヘルニアをめぐるいくつかの問題点について」脳神経外科ジャーナル 1997年 6巻 10号 p.674-681

記事執筆者
院長 前田真吾

六本木整形外科・内科クリニック

院長 前田真吾

日本整形外科学会認定 専門医