変形性股関節症

変形性股関節症の概要

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)は、脚の付け根にある股関節に痛みや可動域制限(動かしにくくなること)が現れる病気です。特に40~50代以降の中高年女性に多くみられます。また、変形性股関節症は進行性の病気なので、自然に治癒することはありません。

(参考)変形性股関節症診療ガイドライン2016改訂第2版|P.13

 

変形性股関節症の初期は歩き始めや立ち上がるときに股関節の痛みを感じる程度ですが、進行すると股関節の痛みが強くなったり常に痛くなったりします。また、股関節を動かせる範囲(可動域)も減少していくため、足の爪切りや靴下を履く動作が困難になったり、階段では手すりが必要となったり、足を引きずって歩いたりする(跛行:はこう)など、次第に日常生活にも支障を来すようになります。

 

変形性股関節症の主な原因は、加齢や股関節の発育性疾患により股関節の骨・軟骨がすり減り変形することです。
変形性股関節症が疑われる場合、できるだけ股関節に負担をかけないような日常生活を心掛けながら、治療の基本は生活指導や運動療法・薬物療法などの保存的治療を行います。保存的治療で改善できず、日常生活に支障を来す場合には「手術」を検討します。

 

当院では、従来の保存的治療による痛みの改善に加え、再発や新たな部位の痛みの発生を予測して予防する治療積極的保存治療」を行っています。
積極的なリハビリテーションや姿勢・動作矯正、生活指導などによって、股関節に負担をかけない身体作りをサポートします。
さらに、ご自身の血液を使って組織の再生を促す「再生医療PRP-FD療法」にも当院は対応しております。(※自由診療、15万円。価格については、患者様の治療内容によって変わりますので、お問い合わせください。)関節は一度変形すると、二度と戻りません。そのため、早期発見・早期治療が大切です。脚の付け根の痛みや動かしにくさなど、脚の付け根に異変が現れたら、お気軽にご相談ください。

 

変形性股関節症のセルフチェック

次のような症状はありませんか?

  • 両親のどちらかが、変形性股関節症である
  • 子どもの頃、股関節に異常があった(臼蓋形成不全)
  • 原因不明の腰痛や膝の痛みがある
  • 靴底の減りが左右で異なる
  • 足の長さが左右で異なる
  • 前よりも歩くのが遅くなった(指摘される)
  • 脚の付け根を押すと痛む
  • 上半身が傾いていたり、歩くと体が左右に揺れたりする(指摘される)
  • いつのまにかガニ股・O脚になった
  • 胡坐(あぐら)がかけない

いずれかに心当たりがある方は、変形性股関節症の発症リスクが高いので、一度検査を受けることをおすすめします。

股関節の構造

両脚の付け根部分にある「股関節」は体の中で一番大きな関節です。この股関節は上半身と下半身を繋ぐ役目をしていることから非常に負荷がかかりやすい関節で、片足で立っているだけでも体重の約3~4倍もの負荷が、早足で歩いている時には約10倍の負荷が股関節にかかるとされています。

 

股関節は、大腿骨(だいたいこつ=太ももの骨)の上端にある球状の「骨頭(こっとう)」と、骨頭の約4/5を包み込んで受け皿のような形をしている「寛骨臼(かんこつきゅう)」から構成されている球関節*1です。

*1球関節:ボールと受け皿のような関係をする関節のこと。股関節のほか、肩と腕の付け根の関節のように自由度の高い関節。)

 

さらに、骨頭と寛骨臼の接する面にはクッションや潤滑剤の役割をする「軟骨」があり、股関節の周りに存在する様々な筋肉や腱によって股関節の安定を保ちながら、脚を前後左右と自由に動かすことを可能にしています。そのため、変形性股関節症によって股関節の変形や可動域の低下が進行すると、脚を様々な角度へ動かすことが困難になり、歩くことや最終的には立つことすら難しくなるほど日常生活に大きな影響を及ぼします。

 

股関節

(図)股関節の構造

 

変形性股関節症の症状

変形性股関節症の症状は、進行段階によって異なりますが、「変形が強い=痛みが強い」とは限りませんが、進行状況と症状の目安を以下に解説します。

1.超初期(前期変形性股関節症)

変形性股関節症の超初期段階においては、股関節形成に異常がみられていても、まだ関節軟骨が保たれているため、痛みはありません。人により、長時間歩行した後に足がだるい、疲れやすいなどと感じることがあります。

2.初期

変形性股関節症の初期段階では関節軟骨がすり減り始め、股関節内における大腿骨頭(ボール部分)と寛骨臼(受け皿)同士の隙間が狭くなったり、軟骨と接する骨が固くなったりします(骨硬化)。この頃から歩き始めや立ち上がりの際に脚の付け根や太もも・お尻に痛みを感じるようになります。なお、股関節の神経は膝にも分布しているため、膝に痛みが現れることもあります。

3.進行期

変形性股関節症がある程度進行した進行期においては、股関節軟骨が広範囲にわたってすり減り、骨の隙間が明らかに狭くなります。股関節の骨で硬化が始まり、そこに空洞ができる「骨嚢胞(ほねのうほう)」や、骨に出っ張りのようなトゲ「骨棘(こつきょく)」ができて変形が進みます。ここまで進行した場合、殆どの場合で痛みが強くなるため、長時間歩行や立っていることがつらくなり、足を引きずりながら歩くといった跛行(はこう)がみられます。関節の可動域が狭くなるため、階段の昇降が辛く感じたり、しゃがんだり足の爪を切ることや靴下を履いたり脱ぐことも難しくなります。

4.末期

変形性股関節症が末期に入ると、股関節の軟骨が消失して、寛骨臼と骨頭の隙間が完全になくなります。骨頭が潰れることで常に強い痛みを感じて、これまで紹介してきた症状に加えて夜寝ていても痛い状態(安静時痛)が生じることもあります。

 

変形性膝関節症の関節

(画像引用)変形性膝関節症の関節イメージ図|日本整形外科学会

 

変形性股関節症の原因

変形性股関節症の原因は、約8割が臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん:大腿骨頭の受け皿になるお椀の形をした臼蓋が浅い)という先天性の発育不全とされています。その他の主な原因は加齢に伴って股関節の骨・軟骨がすり減り変形することが挙げられます。

上述の通り変形性股関節症の原因の約8割は先天性の発育不全によるものでしたが、近年の超高齢化社会に伴い、加齢に代表される長年の負荷の蓄積によって発症する割合も増えてきています。

変形性股関節症の先天的な発症要因の解説

日本人では、次のような発育性股関節疾患が変形性股関節症の主な原因となっています。

  • 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)

    臼蓋形成不全は、変形性股関節症の原因として非常にメジャーなものとされており、股関節を構成する骨盤側の臼蓋(大腿骨の先端を覆うお椀)が発育不全により、大腿骨の先端(大腿骨頭)を十分に覆うことができない先天性の疾患のことです。臼蓋が小さいと、荷重の伝達する部分の面積が小さくなるため、臼蓋に過剰な負荷がかかります。日本人に多く、成人男性では0~2%、成人女性では2~7%がこの疾患であるとされています。

    この臼蓋形成不全をお持ちの方が思春期で活動量が増えたり、女性であれば出産後に股関節への負荷蓄積によって少しずつ軟骨が傷つき、最終的に変形性股関節症へ移行します。

    臼蓋と骨頭

    (図)臼蓋と骨頭
  • 先天性股関節脱臼

    先天性股関節脱臼も変形性股関節症の発症要因のひとつであり、大腿骨頭が完全に臼蓋から外れることです。出生時の完全脱臼は少なく、家族に股関節が緩い・骨盤や骨頭の形態が悪い方がいるなどの「遺伝的素因」と、乳児期に股関節を伸ばす姿勢を頻繁に取るなど「環境素因」が組み合わさって発症すると考えられています。

    股関節のX線写真

    (画像引用)股関節のX線写真|日本整形外科学会
    https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html

変形性股関節症の先天的因子以外の発症要因

変形性股関節症にかかりうる先天的因子がない場合であっても、以下に紹介する要因によって、股関節への負荷が徐々に蓄積することで少しずつ股関節の軟骨が摩耗して関節が変形、変形性股関節症を発症する場合があります。

  • 加齢

    先天的要因以外の変形性股関節症の代表的な原因は加齢です。加齢に伴って関節の軟骨が弾力性を失うため、少しずつ傷つきやすくなります。傷が蓄積することで軟骨が薄くなったり消失して関節内の隙間が狭くなり、変形性股関節症へ発展する可能性があります。

    また、先に述べた先天的要因をお持ちの方の場合でも、ある程度の年齢までは問題がなく、加齢をきっかけに周辺組織や軟骨が衰えて変形性股関節症へ発展することも少なくありません。50歳を超えて股関節やその周囲に違和感や痛みを覚えたら一度整形外科を受診されるべきでしょう。

  • 重量物の取り扱い

    重いものを持ち運ぶなど股関節に負担のかかる作業・仕事は、変形性股関節症の発症・進行の危険因子になりやすいと報告されています*2。

  • スポーツ

    ランニングなどのスポーツでは、股関節に負担がかかりやすく、ダメージが蓄積しやすくなります。
    若い年齢の方であれば問題になりにくいですが、先に述べたように加齢に伴って軟骨や周辺組織は衰えて傷つきやすくなっていきますので、ある程度の年齢でスポーツを継続していて違和感を覚える場合は注意が必要です。

  • 体重増加(肥満)

    肥満や過体重も変形性股関節症の発症原因の一つです。特に青年期初期(20代~30代)からの肥満は、発症リスクを高めると報告されています*2。

*2(参考)変形性股関節症診療ガイドライン2016改訂第2版

変形性股関節症の検査・診断

①問診・視診・触診

自覚症状について、詳しく伺います。変形性股関節症が疑われるようであればより詳しい検査を行います。

②X線検査(レントゲン)

股関節の軟骨の隙間が狭くなっていないか、骨硬化や骨嚢胞・骨棘がみられていないかを確認します。その際、変形性股関節症の重症度を示す「K/L分類」を使って診断します。

③MRI検査

MRI検査では、レントゲン検査では確認できない骨の内部や軟骨・周囲組織の状態が確認できますので、軟骨のすり減り具合などからより詳しい変形性股関節症の進行度を観察可能です。治療方針(特に手術を検討するとき)を決定するための補助的診断にも有用です。
ほかにも、必要に応じてCT検査を行ったり、補助診断に超音波検査を行ったりすることがあります。

変形性股関節症の治療法

現在の変形性股関節症の治療は、症状を和らげたり変形の進行を抑えたりすることを治療目的として、基本的には「保存的治療」から始め、保存的治療を行っても症状が改善せず、日常生活に支障を来す場合には「手術」を選択します。

変形性股関節症の治療では「痛みを和らげること」と「股関節への負担を軽くすること」を並行して行うことが大切です。
薬物療法による痛みの抑制のほか、当院では「積極的保存治療」として物理療法・マッサージ・運動療法などの理学療法(リハビリテーション)に力を入れています。

医師の指示のもと、理学療法士が患者様の痛みの緩和や再発防止のための股関節に負担をかけない姿勢・動作など身体作りをサポートします。

① 保存的治療

変形性股関節症の治療では、次のような保存的治療を行います。

  • 局所安静

    痛みが強い急性期には、安静にしましょう。
    ただし、痛みが落ち着いてきたら、適度に動いて筋力低下を防ぐ必要があります。

  • 薬物療法

    薬物療法の目的は炎症や痛みを和らげて、日常動作の改善を図ることです。痛みが強い場合などに行います。
    アスピリン・ロキソプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やアセトアミノフェンなど痛み止めの内服・湿布、痛みの悪循環を断ち切る「ブロック注射」*3などで速やかに痛みを取り除いて、早期からのリハビリテーションに繋げます。
    *3ブロック注射:痛む部位の神経付近に麻酔薬を注射する。)

  • 物理療法

    物理療法とは温熱療法、牽引療法、電気刺激療法、光線療法(レーザー・赤外線)などにより、運動機能の活性化を図る治療です。
    この治療は痛みの緩和・血流改善・筋肉や関節の動きを改善させるといった目的があります。

  • 運動療法

    運動療法とはリハビリテーションによって関節の可動域を広げたり、筋肉トレーニングによって関節周囲の筋肉を鍛え、関節を筋肉で支えられるようにすることで痛みの軽減などを目指す治療です。
    運動療法は症状悪化防止・再発防止・股関節の可動域を広げる・軟骨に栄養を行き渡らせるといったことを目的としています。
    変形性股関節症における運動療法は「痛みが落ち着いてから行う」「やりすぎない」ことがポイントです。股関節周辺のリハビリを中心に行って姿勢や動作を改善し、筋肉トレーニングを行って股関節への負担を軽減させるようにします。

  • 装具療法

    装具療法とは、杖やサポーターによって関節への負担を減らしたり、関節の安定性を強化することを目的とした治療です。
    変形性股関節症の初期から中期までの股関節の変形が少ないケースに有効です。
    当院では、変形性股関節症の原因を評価して、姿勢指導やセルフリハビリテーションの指導、徒手療法、物理療法などを組み合わせて行っています。

② 手術(関節鏡手術・骨切術・人工関節置換術)

変形性股関節症に対して、上述の保存的治療を行っても改善せず、痛みで歩けないなど日常生活に支障を来している場合には、手術を検討します。当院では、股関節の変形の度合いだけでなく、患者様の年齢や体力・どこまでの回復を希望するかなどを伺い、よくご相談させていただいた上でご納得いただいてから手術をご選択いただいております。
(※手術の必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介させていただきます。)
  • 関節鏡手術

    X線検査で明らかな「臼蓋形成不全」がなく、MRI検査などで「股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)」*4という股関節内の軟骨組織の損耗が確認された場合などに適応となります。この股関節唇損傷は変形性股関節症を進行させる要因となりますので可能であれば対処が必要です。

    股関節の外側に小さな穴を2~3か所開けて関節鏡(関節用の内視鏡)を挿入しながら、痛んだ組織の部分除去や縫合を行います。入院期間は1週間程度ですが、股関節は他の関節と比較して関節鏡を挿入するスペースが非常に狭いため、高度な手術技術が必要となります。

    (*4股関節唇損傷:寛骨臼の縁にある柔らかい軟骨繊維が損傷した状態。ゴムパッキンのように大腿骨頭を包み込む役割をするため、損傷すると股関節に痛みが現れる。)

    関節唇の位置

    (図)関節唇の位置
  • 骨切り術(こつきりじゅつ)

    「骨切り術」は関節温存手術とも呼ばれ、自分の骨を使って関節のバランスを調整する手術です。おおむね股関節の変形が進行していない前期関節症~初期股関節症までの方に適応となります。

    この骨切り術は、主に変形性股関節症の原因が臼蓋形成不全である方に対して行われます。骨盤側の骨(寛骨臼)を切り取り回転させて、大腿骨頭と接地する関節面を広げる「寛骨臼回転骨切り術(CPO)」を行います。

    早期のこの手術を行えば、変形性股関節症の進行抑制が期待できたり、長期的に痛みがない生活を送れる可能性があります。

    一方で、骨切術後の入院期間は約2か月と長く、さらに術後のリハビリテーションをじっくり行う必要があるため、仕事などへの復帰は約半年後になります。また、壮年期まで(45歳未満)の方に比べ、中年以降では術後に痛みが再発して再手術(人工関節置換術)となる可能性が高いという報告*5もあります。

  • 人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ)

    変形性股関節症で変形して痛みの原因となっている股関節面を切り取って、チタン合金やセラミックなど耐久性に優れた素材で作られた人工関節に置き換える手術です。

    現在の日本では年間約7万例を超える手術が行われており、人工関節の耐用性も55歳以下の方で術後10年で87~97%*5と良好です。体力があれば、ご高齢の方でも施術可能です。

    人工関節置換術は、骨切術よりもリハビリ期間が短いメリットがありますが、人工関節の寿命による再置換手術が必要になる可能性があるほか、身体へ人工物を埋め込む手術ということで体への負担が大きいことや脱臼・感染症などの合併症リスクもゼロではありません。

    入院期間は約1か月となり、退院後も継続してリハビリテーションを行う必要があります。

*5(参考)変形性股関節症診療ガイドライン2016改訂第2版|P.191

人工股関節置換術

(図)人工股関節置換術イメージ

変形性股関節症の予防

ご紹介してきましたように、変形性股関節症という疾患は、先天的要因の有無で発症のしやすさに差異はあるものの、股関節にかかる負担が蓄積していくことで次第に悪化していく病気です。
なるべく変形性股関節症に罹患するリスクを抑えて予防をするには、日常生活で次のような点を意識すると良いでしょう。
  • 無理のない範囲での運動

    無理のない範囲でお尻の筋肉(臀筋群:でんきんぐん)や太ももの筋肉を鍛えたり、股関節の動きを大きくするストレッチを行ったりしましょう。(痛みがあるなどの場合には無理には行わず、整形外科で医師や理学療法士の指導を受けましょう)

  • 有酸素運動

    適度に有酸素運動を取り入れ、体力を維持しましょう。特に「水中運動」がおすすめです。
    水中では浮力を活用できるため、重力による股関節への負荷を軽減しながら運動することができます。股関節への負担が大きい平泳ぎを除き、水泳や水中歩行など少し疲れる程度の運動(目安:約30分×週2~3回)を行うと良いでしょう。

  • 適正体重の維持

    肥満や過体重は股関節への負荷を強めてしまい変形性股関節症を発症させる原因となります。上述のような軽い有酸素運動などを取り入れて、適切な体重を保つようにしましょう。
    また、食生活を見直し、脂肪のつきにくい食事を意識することも効果的です。

  • お風呂で体を温めて血行を良くする

    39~40℃くらいのぬるま湯にゆっくり浸かると血行が促進され、体内の組織循環が促進されますのでおすすめです。

  • 洋式の生活スタイルへの変更

    正座やあぐらをかくなどの和式の生活スタイルは股関節に負荷をかけてしまいます。これらの和式の生活を辞め、股関節への負荷を避けるために椅子に座る、和式トイレを洋式トイレへ変更するなども変形性股関節症の予防には効果的です。

  • 歩行速度とペース

    歩くだけでも股関節には負荷がかかります。特に早歩きなどは体重の約10倍の負荷が関節にはかかると言われています。
    歩くときはゆっくり歩くことを意識して股関節への負担を少なくし、15分程度歩いたら休憩することを心がけることで変形性股関節症予防に繋がります。

変形性股関節症に対し、自分でできる股関節を鍛える運動・ストレッチ

変形性股関節症の治療や予防方法として筋肉トレーニングをご紹介してきましたが、急な筋肉トレーニングはかえって関節や筋肉を痛める原因となります。必ず先にストレッチを行ってほぐしてから、筋肉トレーニングをするようにしましょう。また、過度に負荷をかけることは、変形を悪化させる危険性があります。ストレッチや筋トレは痛くない範囲で行い、股関節の痛みが強いときは無理に行わないように注意しましょう。セルフケア中に痛みなど症状が現れたり悪化したりするときは、すぐに中止して、速やかに医師の診察を受けるようにしてください。

股関節の動きをよくするストレッチ

  • 太もも前面を伸ばすストレッチ(左右30秒×3セット)
    • ① 壁に背を向けて立つ
    • ② 左手で壁に手をついて、体を支える
    • ③ 左足を曲げて、右手で左足首を持つ
  • 股関節とお尻を伸ばすストレッチ(左右30秒×3セット)
    • ① 仰向けに寝る
    • ② 左ひざを抱え胸の方に引き寄せる

    膝抱えストレッチ

    (図)膝抱えストレッチ
  • 太ももの内側を伸ばすストレッチ(30秒×3回)
    • ① 足を開いて座り(開脚)、手はそれぞれ太ももの上に乗せる(※手を体の前に出しても可)
    • ② 手をつま先の方に滑らせるようにして、上半身を前に倒す

股関節周辺の筋肉トレーニング

  • 太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えるトレーニング(左右10回×3セット)
    • ① 仰向けに寝て、両膝を直角になるように曲げる
    • ② 片膝だけ伸ばして、上に上げられるところまでゆっくりと上げて、8秒静止する
    • ③ ゆっくりと足を下ろす
    大腿四頭筋トレーニング

    (画像引用)大腿四頭筋トレーニング|日本整形外科学会
  • お尻と太もも裏(ハムストリングス)を鍛えるトレーニング(10回×3セット)
    • ① 仰向けに寝て、足を肩幅に広げて、膝を立てる(手は体の横に置く)
    • ② ゆっくりと腰を床から上げ、上げられるところまで上げたら8秒静止する
      ※息を止めると血圧が上がりやすいので、普通に呼吸をしながら行いましょう!
    • ③ ゆっくりと腰を下ろす
    腰上げトレーニング

    (図)腰上げトレーニング
  • お尻の横の筋肉(中殿筋)を鍛えるトレーニング(10回×3セット)
    • ① 床に膝を立てて座る
    • ② 膝の上で運動用のゴムバンド(なければ、ベルトで代用可)を少し緩めに(少し遊びがあるように)巻く
    • ③ 膝を立てたまま仰向けに寝て、立てた膝を左右同時に外側へ開く
    • ④ 開けるところまで開いたら、8秒静止
    • ⑤ ゆっくりと膝を閉じる

院長からひとこと

変形性股関節症は早期発見、早期治療が重要です。変形が高度になると治療に難渋いたしますが、早期に病態をご理解していただき、治療をすることで変形の進行を抑えることが可能です。また、変形が高度の場合もリハビリテーションや注射療法である程度の痛みの緩和が可能です。股関節に痛みがある場合は、お気軽にご相談ください。
記事執筆者
院長 前田真吾

六本木整形外科・内科クリニック

院長 前田真吾

日本整形外科学会認定 専門医