テニス肘・ゴルフ肘
*1スポーツ障害:スポーツで同じ動作を繰り返し行うことで骨・筋肉・腱を使いすぎてしまい、慢性的な痛みが生じること
肘関節の外側に付着している筋肉・腱が炎症すると「テニス肘」、肘関節の内側に付着している筋肉・腱が炎症すると「ゴルフ肘」と呼ばれます。
しかし、保存的治療で改善せず日常生活に支障を来す場合には「手術」を検討することになります。
とはいえ、テニス肘・ゴルフ肘は発症後速やかに適切な治療をすることにより、多くのケースで痛みの改善が期待できます。肘に痛みや違和感が現れテニス肘やゴルフ肘が疑われたら、お気軽にご来院ください。
テニス肘の原因・症状
テニス肘の原因
テニス肘は、手首を反らす動作を繰り返し行うことによる「過剰な負荷」や、加齢に伴う「腱の柔軟性低下」が原因となって、上腕骨外側上顆に付着する腱が炎症を起こし発症します。
テニス肘の症状
テニス肘の症状は「肘の外側の痛み」です。特に、物を掴んで持ち上げる、雑巾絞り、ペットボトルの開封、草むしりのときなど、手首を使う動作で肘の外側から前腕にかけて痛みが発生します。
ひどく症状が進行すると、物を掴んで持ち上げることすらできない状態にまで進行したり、安静にしていても肘の外側が痛む、という状態に陥ることもあります。
テニス肘を発症しやすい方
「テニス肘」という呼び名は、この疾患がテニス愛好家に多く発症し、特にテニスのバックハンドによる負担で発症することから名づけられました。
ですが、スポーツをする人以外でも発症することがあり、家事などで手首をよく使う主婦の方、重いフライパンを振る料理人や工事現場で交通整理をする方など肘に負担がかかる動作をする仕事の方、パソコン(キーボード・マウス)を使うデスクワークの方などでも「テニス肘」は発症します。
また、最近はゲームや動画を見るなど長時間スマートフォンを持ったり、操作をすることでも発症することがあるため、「テニス肘」ではなく「スマホ肘」と呼ばれることもあります。
ゴルフ肘の原因と症状
ゴルフ肘の原因
手首を手のひら側に強く曲げたり掴んだりする動作を繰り返し行うことによる「過剰な負荷」や、加齢に伴う「腱の柔軟性の低下」が原因となって、上腕骨内側上顆に付着する腱が炎症を起こすことでゴルフ肘を発症します。
ゴルフ肘の症状
ゴルフ肘の症状は「肘の内側の痛み」で、手首を内側に回すとき・握手など、強く手を握る動作をしたときなどに現れます。
また、薬指や小指が痺れるような症状を自覚することもあります。
症状がひどくなると、何も動作をせず安静にしていても肘の内側が痛むこともあります。
ゴルフ肘を発症しやすい方
ゴルフ肘はゴルフのスイングの際、体をうまく使えず手の力だけで打つようなゴルフ初・中級者に多くみられるほか、テニスのフォアハンドを繰り返すなど、手首への過剰負荷により発症することがあります。
スポーツ以外でも、家事などで手首をよく使う主婦の方・重たいものを持ち上げたり引っ張ったりする仕事をされている方・パソコン(キーボード・マウス)を使ったデスクワークの方でも発症します。
ゴルフ肘・テニス肘の検査・診断
①問診・視診・触診
②痛みの誘発テスト
③エコー検査(超音波検査)・X線検査(レントゲン検査)
レントゲン検査では、肘の内側・外側に骨棘(こつきょく:骨のとげのこと)がみられることがあります。
そのほか、テニス肘・ゴルフ肘の特徴的な症状があり、検査で他の疾患ではないと確認できれば、「テニス肘」「ゴルフ肘」と診断します。
テニス肘・ゴルフ肘の治療法
治療法には、消炎鎮痛剤の服用や湿布・軟膏・注射などの薬物療法、温熱療法、手首・指のストレッチなどのリハビリ、肘用ベルトなどの装具療法といった保存的治療のほか、手術、体外衝撃波治療(自由診療)などがあります。
基本的には手術以外の保存的治療から始め、患者様ごとのテニス肘・ゴルフ肘の進行度や痛みの程度によって選択します。
当院では装具療法・物理療法・マッサージや運動療法などの「理学療法(リハビリテーション)」に力を入れています。医師の指示のもと、国家資格を持った理学療法士がテニス肘・ゴルフ肘の疼痛緩和・運動機能の回復をサポートします。さらに、当院では新しい治療法として注目されている「体外衝撃波治療」や「注射による治療」にも注力しています。(※自由診療)
①保存的治療
-
-
局所安静
テニス肘・ゴルフ肘の治療で一番大事なのが、「手首の安静」です。原因となる負担を減らし、患部の回復に努めます。
-
特にスポーツによって発症した場合はスポーツ活動の一時中止が必要になります。
-
-
薬物療法
非ステロイド系消炎鎮痛剤(痛み止め)の内服や、湿布を貼るなどして痛みや炎症を和らげます。
痛みが強いときには、ステロイド注射を行うことがあります。 -
物理療法
急性期にはアイシング(冷却)、慢性期には温熱療法・電気刺激療法・光線療法(レーザー・赤外線)などにより、痛みを緩和するとともに血流を改善、筋肉や腱を柔らかくします。
-
運動療法
痛みの急性期を過ぎたら、肘周囲の筋肉・腱のストレッチを行います。運動療法により筋肉を鍛えることで関節にかかる負担を軽減でき、また、ストレッチにより筋肉・腱の柔軟性を獲得することで、動かしても炎症を起こさないようにする目的があり、非常に重要な治療法です。
-
装具療法
テーピングや肘用ベルト(エルボーバンド)などで、肘の腱の内側・外側上顆付着部への負担を軽くし、炎症を抑えます。
なお、肘用ベルトは痛みのある骨の出っ張りに巻くのではなく、骨の出っ張りから指2本分ぐらい手首寄りの筋肉に巻きます。このベルトは肘にかかる衝撃を和らげてくれます。
-
②手術(切除術・骨棘切除術など)
関節鏡視下滑膜切除術では、痛みの主な原因となっている腱の付着部分を切り離します。手術は30分程度で完了し、日帰りの手術が可能です。ただし、効果には個人差があります。
また、骨棘によって痛みが発生している場合には、骨棘を切除する手術「骨棘切除術」を行うことがあります。
③収束型体外衝撃波治療(自由診療 : 初回25,000円 2回目以降15,000円)
当院ではテニス肘・ゴルフ肘による痛みに対し、「体外衝撃波治療」を行っています。体外衝撃波治療は、元々「腎臓結石」を破砕する治療に利用されており、整形外科分野では疼痛疾患の除痛治療を目的に応用されました。
音速を超えて伝わる高出力の衝撃波を患部(肘)に当てると、痛みを発する自由神経終末の減少や手根屈筋群・手根伸筋群の血流改善および組織の修復が促されるため、痛みの軽減効果が期待できます。ただし、体外衝撃波治療の効果には個人差があります。
体外衝撃波治療は外来通院での治療が可能で入院は不要です。また、これまで重篤な副作用も確認されていないため、保存的治療と手術療法の間の「新しい治療法」として注目されています。
当院での収束型体外衝撃波治療の流れ
1. 診察(体外衝撃波が適応かどうかの確認)
2. 圧痛点、超音波検査で照射部位(患部)の特定
3. 照射(1回約10分)
- 麻酔は不要です
- 低レベルの出力から照射し、患部の反応を確認しながら少しずつレベルを上げていきます
- 治療回数の目安は、1〜2週間に1回×4週間(計4回)です。患者様の症状や効果により照射回数は前後します。
体外衝撃波治療では患部に衝撃波を当てるため、治療中にチクチクするような
痛みを感じることがありますが、患者さまの許容できる範囲内で出力を調整します。治療後1~2日ほど一時的に痛みが強く感じることもありますが、次第に軽くなります。ただし、低出力の照射でも耐えられない場合には、治療を終了することがあります
テニス肘・ゴルフ肘予防に役立つ簡単セルフストレッチ・筋肉トレーニング
ただし、痛みがある急性期には行わないようにしましょう。
また、ストレッチ中やストレッチ後に痛みを感じるときは、無理に行わないようにしましょう。痛みがあるにも関わらず無理に行うとかえってテニス肘やゴルフ肘を悪化させかねません。ストレッチ開始時期などの詳細は、医師と相談してから行うと安心です。
テニス肘の予防ストレッチ・トレーニング
肘に痛みがある方の腕を伸ばします。
- (右手の場合)右腕を伸ばして、手の平を下向きにする
肘は伸ばして、曲げないように注意 - 左手で右手を持ち、手の平が体側に向くように手首を曲げて引く
前腕の外側(伸展筋)が伸びていることを感じましょう - 手首を曲げた状態でさらに指も曲げる
より伸筋群が伸びて効果的です
※目安:1回15秒×3セット
肘に痛みがある方の手を伸ばす。
- (右手の場合)右腕を伸ばして、手の平を下にして水を入れたペットボトル(500ml)または重り(1kgぐらいまで)を持つ
- 腕はそのままの高さで、ペットボトル(重り)をゆっくり持ち上げて手首を反らす
5秒くらいかけて、ゆっくり反らす - 逆にゆっくりペットボトル(重り)を下ろして、手首を曲げる
5秒くらいかけて、ゆっくり曲げる
※目安:1回10秒×3セット
ゴルフ肘の予防ストレッチ
肘の痛みがある方の手を伸ばします。
- (右手の場合)右腕を伸ばして、手の甲を上向きにする
肘は伸ばして、曲げないように注意 - 左手で右手を持ち、手の甲が体側に向くように手首を反らして引く
前腕の内側(屈筋群)が伸びていることを感じましょう
※目安:1回15秒×3セット